パンデルフィーの花びら
「……今の言葉は、聞かなかったことにしてあげます」
「でも」
「それ以上言うとまた口を塞ぎますよ」
驚いたライナは見開いた目を揺らす。今度は冗談ではなく、真剣で鋭い視線を送られた。
イルミスはライナの両肩に手を置いて、目線を合わせたまま苦しそうに声を絞り出した。
「私は、ライナが生涯ひとりになってしまうことも、他の男に心を許すことも耐えられません」
「イルミスさん……」
「だから、私に守らせてはもらえないか。ーーライナも、ライナの家も、大切な畑も」
置かれた手の力が一層強まり、指に力が入っていることが肩の感触から感じられる。イルミスは少し黙った後、静かに付け加えた。
「貴女には、花のように優しく笑っていて欲しい」
ーー願わくば、私の隣で毎日。
そう耳元で囁かれると、ライナは湯気でも出そうなほど真っ赤になりながら、大粒の涙をこぼした。
「相変わらず、泣き虫なお嬢さんですね」
呆れたような声とは裏腹に、温かい指が優しく涙を拭っていった。