パンデルフィーの花びら
「とっても素敵です。ありがとうございます」
「私はもっと目立った方が良いと思うけれど……ライナがそう言うのなら」
渋々、といった風にミレーヌが折れる。次の瞬間悪戯っぽく笑顔を見せて、彼女の使用人にすら聞こえないくらい小さい声でライナに囁いた。
「それなら騎士様に気付いてもらえるように、人一倍頑張らないと駄目よ」
当日は目一杯お洒落をした方が沢山いらっしゃるんだから、と続けられて、ライナは真っ赤になった。
「私、そんなつもりは……!」
ミレーヌはライナに、当日着飾ってイルミスを誘惑しろとでも言いたげだったが、ライナはそのようなことは露ほども思っていなかったため、大層慌てた。
「ライナは本当にこの手の話には疎いわよね。良いことなのかも知れないけれど、不安になるわ」
「イルミスさんには心に決めた方がいるのです。それを邪魔しようだなんて思いません」
口にするとちくりと胸が痛む。まるで心臓が針でつつかれているようだ。どんなに強気なことを言っていても、いざ本人を目の前にしたらどうなってしまうのだろう。もし彼の隣に、既に思いの通じた人が立っていたとしたら、耐えられる自信がない。
こうして、もやもやと複雑な気持ちが広がったまま、花祭りに向けての準備が進んでいった。