とある国のおとぎ話

目が覚めれば












「いやぁ~生き返りましたね。あんな辺境に飛ばすなんて、総統も鬼畜ですよね!」



 ソファーにどしりと誰かが座る振動と共に、耳障りな陽気な声。


 ぼんやりと意識が浮上していく。



「毎日が吹雪の上、施設の中も寒いし汚いし古いし。しかも、可愛い女の子もいないしで、まさに四重苦!!生きた心地がしませんでしたよ」



「…………」



「この半年で、やつれて天国に行く覚悟を何度したことか!」



「…………」



「それでも、強固な精神で文句を言わずに職務に専念して、その俺の成果が中央復帰です。少佐の成果じゃありませんよ。僕の成果です」



「…………」



「いや、とにかく戻れて良かった。ねぇ!一色少佐?って、あれ?さっきから聞いてます?」



「……てめえは毎日文句を垂れて俺に仕事を押し付けてただろうが」



 この不自然に低くなる声は決して、寝起きを邪魔されただけが原因ではない。



「あ~ひどい!少佐がのん気に寝ている間に仕事をしていた優秀な補佐官に言う言葉ですか!?」



 安眠を妨害した挙句、めそめそ泣き真似をする部下に、殺意を覚える。


 非常に不本意ながら腹心であるこの男を抹殺すると、面倒なことになるから辛うじて殺してはいない。


 この陽気なやかましさに触れ合うこと4年。


 今でも慣れることはない。



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