とある国のおとぎ話




「うっさい。俺は疲れてんだ」



「それはそうでしょう。ただでさえ忙しい仕事に加え、内部諜報までして。全て自業自得です」



 正確な情報が必要だった。


 ここを離れている間に何かが起こっていたのは今漂う空気でわかる。


 男が言うように不穏な輩がいて、内部で何かが行っている。


 問題は、その根源はどこかということだ。


 なかなか掴めない、それこそ空気のように形がないのだ。


 頭も切れ、中央内部に精通している者。


 その足がかりを秘密裏に入手するのに時間を費やしたが不可能ではなかった。


 そして、掴んだものは。


 俺には信じ難いものであって。


 否定しようと、さらなる時間を費やしたが、裏付けを次々と補強するものばかりが出揃う。












 そして、彼女は、いや、不穏分子は休暇届を出して姿をくらませた。


 もう、これ以上に補強する材料は必要なかった。


 今にして思うと、あの男は見当がついていたのであろう。


 俺を中央に戻したのは、退屈しのぎに俺がどういう行動を取るのか見物したいというくだらない理由。


 つくづく、悪趣味な男だ。











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