とある国のおとぎ話




「使えると思ったから生かしたんだ。使えないなら容赦なく、殺す」



 俺の駒になると思ったから生かした。


 そこに同情という無駄な感情はない。


 人を殺してしか生きていく術がない子供なんて大勢いる。


 親に捨てられる子供なんて、もう数えることさえ馬鹿らしい。


 そういう世界なのだ。


 この冬に閉ざされたこの国は。



「わかってます。でも、僕は少佐に殺されませんよ?あなたの盾になって死にますから。その時までは死にません」



 喜楽の一点の曇りもないきっぱりとした口調が、笑みが、俺を不快にさせた。


 それだけでも不快なのに、夢の出来事と重なりこれ以上ないほどの気持ち悪さで俺は堪らず舌打ちをする。



「てめぇなんかに守られるなんてごめんだな。化けて出て、泣き言を言われるのが目に見えてる」



「少佐って意外と迷信深いですね。でもね、それでも少佐はいざとなったら俺を盾にしますよ」



 確信に近い言葉に、眉根に力がこもる。


 俺の渋面を眺めながらも、喜楽は笑みを絶やさない。



「だって、少佐は死ねないでしょ?彼女がいるから」



 俺は喉に何かが詰まったかのように言葉が出せなくて、窓の外を眺めた。


 そこにある光景は夢と変わらないのに。


 あの時の気持ちとは全く違うことに、諦めを感じた。


 それでも、進むべき道は変わらない。


 俺を動かすのはただ一つだけだから。




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