とある国のおとぎ話
裏切
指定の場所は、中央から北へ三時間ほど走らせた場所。
かつては、栄華を誇ったと伝わるこの土地も、雪で覆われた荒野でしかない。
栄華を誇っていた頃を知る者などもうこの世には存在しないほど昔の話。
俺たちは冬というものしか知らないで育った。
隣国から温暖な気候を輸入し、この国は石油を輸出していたが、両国の関係が悪化しこの国に季節は巡らなっておよそ百年。
隣国に頼れなくなってからというものわずかな輸入に留まり、広大な領土を持つ大国とは名ばかりで、人が暮らせる土地はこの国の3割ほど。
ここは、この国の中でも寒く、晴れることさえない凍った死の土地。
微かに残る廃墟をぼんやりと眺めていると視界に黒い起点を捉えた。
その黒い起点はだんだん距離が近付き、誰だかが判別がつくと、無意識に眉間に力がこもる。
裏切者が二人そろって現れた。