とある国のおとぎ話
「利益?勝ったとしても、冬が終わっても、違う孤児を生むんだぞ。お前みたいな」
まっすぐな視線を、そのまま受け止める。
藤崎のまっすぐさは、あいつと同じ。
まっすぐで、どこまでも正しい。
どこまでも、潔癖であり続ける。
「他国のことなんか知ったことか。俺の勧誘なら諦めろ。反乱分子に成り下がるなんてごめんだな」
他国も、この国も知ったことか。
そんなことはどうでもいい。
こんなくだらない世界なんかどうでもいい。
そう、彼女に見える世界だけが美しくあればそれでいい。
「今は反乱分子でも、いずれ立場は逆転するわ」
馬鹿げた発言に、軽蔑の笑みがこぼれた。
「何か、お前たちは内紛を起こすつもりか?ご立派に戦争反対を掲げておきながら」
「それを防ぐためにお前が必要なんだ。俺たちには葛木さんや花里さんがついてる。それに冬馬が加われば」
総統はもっともらしい理由をつけて、葛木、花里の両名から中将の地位をはく奪した。
二人の人柄は良く知っている、花里の直属の部下として働いたこともある。
坂月の前階級も中将であり、前総統のお気に入りではあった。