とある国のおとぎ話
その総統が不自然なところは何もなく突然死に、坂月が総統となった。
前総統の死は自然であっても、中将が総統になったことは不自然。
その不自然さへも、あの男は自然にやってのけた。
まずもって正当な手段で総統の地位を手に入れた。
男に逆らう者は、やはり不自然ではない形で死んだり、この二人のようにもっともらしい理由で地位をはく奪されたり、どこからともなく湧いた醜聞で引退を余儀なくされたりと、一人一人消えていく。
この二人の中将の空位は未だ埋まらない。
穏やかで思慮深く、人望も才覚も溢れた二人。
坂月にも備わっていたが、それと決定的に違うのは裏表がない人格であるということ。
こういうのを本当の人格者とでも言うのだろう。
そう、だからこそ藤崎もサラもこの二人についた。
もはや、ならず者の集まりとは呼べない恐ろしく大きな組織。
国を二分しかねないほど。
今や軍が、いや、あの男が無視できないほどまでに大きくなっている。
藤崎やサラの少佐クラスも加われば尚のこと。
何もかもがことごとく、悪いほうに流れる。
願えば願うほど、祈れば祈るほど、落胆と絶望は大きい。
だから、願うことも祈ることもいつからかやめてしまった。
自分のことを願うことも祈ることをやめた日なんて思い出せないほど昔。