とある国のおとぎ話
「あいにくだな。他のやつに当たれよ」
藤崎の言葉を遮り、踵返そうとした。
「お前がこっちに来てくれれば、内戦は防げる」
足を止めたのは、こいつらの案に直観が引っ掛かったから。
嫌な予感がしたのだ。
これ以上不快なことはないというほどの嫌な予感が。
藤崎もサラも馬鹿じゃない。
藤崎に関して言えば理想主義者に近いものを感じるが、少佐という階級はお飾りじゃない。
俺が軍を裏切ったからと言って、事態はそう変わらない。
そんなことは二人だってわかっている。
二人が考えていることは、ある程度予想が付きそうだが、それを拒絶する。
考えたその瞬間、血は流れる。
俺が聞く体勢になると、二人は目配せした。
「ターゲットは坂月だけだ。頭を潰せばそれで終わる」
「軍でも蛇でも同じってわけか。で、俺に坂月を殺せ、ってか?」
殺せるなら最初から殺している。
絶えず考えて夢に浸っては、現実に引き戻されてきた。
「冬馬が一人で殺しても反乱軍は反乱軍のまま。それでは意味がないわ。私たちが知りたいのは総統の行動。外に出た時に仕掛けるための」
もう聞きたくはない。
それでも、逃げても何もならない。
目を背けては、何も守れない。