とある国のおとぎ話



「あの男は俺を本当の意味では信頼していない。参謀本部の配属とは言っても、そんな最重要情報を盗めるはずがない」



 こんなことを言わずとも、二人ともわかっている。


 俺をここに呼び出した理由は、きっと。



「あなた自身がそんな危険を冒す必要はないでしょ?如月大尉なら……」



 焼きつくような感情と共に反射的に身体が動いた。


 瞬きをする瞬間さえないほど早く。


 サラの心臓を狙い、引金を引いた。


 殺せるはずだった。


 確実に。


 しかし、撃つ瞬間にサラは俺の腕に触れ、軌道は逸れた。


 もうこれ以上ないというほど怒りに満ちている心がさらに燃え上がる。


 こいつは、わかっていてその名を口にしたのだ。


 その名を口にすれば、俺が迷いなく殺すことを知っていたから回避できたのだ。


 触れてはならないとわかっていながら、その名を口にしたサラには生きている価値などない。


 こいつは排除すべき存在だ。






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