とある国のおとぎ話
それを逃せば、俺に勝機はない。
いや、勝機なんてない。
それでもサラだけは殺してみせる。
彼女を利用する可能性が少しでもある人間は排除しなければ、それがたとえ自分にとってどんな相手でも。
緊張が再び張りつめ、吹雪がいったん途切れそれぞれが動き出そうとした瞬間。
ものすごい速さで、何かが突進してきた。
「は~な~ざ~と~しゃ~ん!!!!」
突進してきたのは開発部の命運をかけたとも言われる軍の最新鋭。
噂には聞いていたが、試作段階で実践で使われるのはもう少し先と聞いていたのに、まさかここでお目にかかるとは。
そして、その中から慌ただしく降りてきたのは喜楽であった。
唖然とする中、喜楽は花里にそのまま突撃と言わんばかりに抱きついた。
「お久しぶりです!花里さん!お会いしたかったですっ!!」
「お~喜楽君!君は相変わらず元気そうだね」
「どこがですか!?花里さんがいなくなったら一色少佐を叱る人がいなくなって、僕への扱いがさらにひどくなったんですよぉ~!!さらにですよぉ!!」
「喜楽、てめぇ……仕事はどうした?」
こめかみが引くついて、口元が不自然に片方だけ吊り上る。
そんな俺に気付いていないのか、無視しているだけなのか。
俺の敵は4人になったと見て間違いなさそうだ。