とある国のおとぎ話
如月は俺を窺うように見てきたが、それに何も答えられずにいると。
「君たちを見ていると、転生を繰り返す神様の話を思い出すよ。何故かな?」
古くから伝わってきた物語。
でも、まともな教育を受けたことがない俺たちにとってはその物語を正確には知らない。
物語の続きを空想する余裕さえない。
今も昔も。
寒さに身を震わすことはなくなっても、ゆとりは生まれてこなかった。
俺たちが身を寄せ合って暮らしていた土地が解放された時、そう、この男と出会った時、何かが変わると思った。
夢を見た。
だが、やがて夢も希望も絶望を引き寄せるものでしかないと気付き。
豊かな暮らしを手に入れても、何も変わることはなかった。
冬に覆われたこの世界にいる限り。
「つまらないことを言ったね。休みたまえ。これは上官命令だ。君たちはこうでもしないと従ってくれないようだから」
「……総統。ありがとうございます」
如月に倣い、頭を下げて執務室を出る。
お互い何も言わずに冷気が漂う廊下を歩く。
士官は俺たちの階級章を見てさっと道を開け礼を取る。
生まれではなく、階級こそがものを言う。
それでいて、階級がすべてじゃない。
後ろ盾とそれを手に入れる能力が必要。
少佐と大尉という階級以上に、俺たちの後ろ盾は大きく。
それ故、縛られる。