とある国のおとぎ話






「4年前、冬馬くんが遠征に行ったのも東部だったでしょ?その時の話、聞いてたからどんな風に変わったかなって」



 俺の険しい顔に、如月は歯切れ悪く言う。



「俺は遠征の話なんかした覚えないぞ」



 如月に血生臭い話はしない。


 彼女の顔が悲しみに染まる姿を見るのが怖いのだ。



「藤崎君に聞いてたから。ほら、藤崎君も東部の遠征に加わってたし、教えてあげたいでしょ?すごく気にしてると思う」



 藤崎の名が出てきたことに心の中で驚くが、嘘を吐くことなんて、とうに慣れてしまっている。



「藤崎とならこの間会って、話した。あいつも当分視察で中央にはいないぞ」



「そうなの?藤崎君も何も言ってくれないなんて」



 如月の寂しげな顔をから視線をさらす。


 そろそろ薬が効いてくる。


 あともう少し、耐えれば、こんな表情を見なくて済む。




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