とある国のおとぎ話
パソコンを起動させ、如月の指を静脈認証へと置くと、緑色に点滅しパスワード画面へと切り替わる。
昔から二人で唱え続けた言葉を打ち込むと予想通り侵入できてしまい、苦笑がこみ上げる。
もし、ここでこのパスワードが違ったなら、ここで終わりだった。
現実は、こうして如月のパソコンへの侵入ができたということは、まだ歩いていけるということ。
どこまで、行けるかなんてわからない。
どこまで行っても、ここにしか居場所はない。
それでも、やるしかないのだ。
如月が総統の許可なしに使える部下は数人いる。
彼らのパソコンのデータは全て閲覧した。
直属の部下が持っているデータがすなわち、今の如月に与えられている仕事と彼女が知っている外の情勢をそのまま示す。
それを見て、安心していた。
あの男は、上手く彼女に与える情報をコントロールしていると。
だが、如月は違和感を持ち、疑念を抱き始めている。
このまま行けば、彼女はメインコンピューターに侵入し、真実を探ろうとする。
それが露見すれば、幽閉か死しかない。
その前に手を打たなければ。