とある国のおとぎ話





「直ちに帰還せよとのご命令でしたので有事だと思いましたが。そうでないならば、まだ私は任務を全うしていないので戻らせていただきます」



「う~ん。君は真面目過ぎる。半年とは言え不便な生活を強いられただろうに。中央に戻れることを喜んでも良いだろう?」



「役目を果たし次第、中央での任務に就かせていただきます」



「いや、ここまでしてくれたならばもう君でなくても構わない。それより、最近内部に不穏な輩がでてきたようなんだ。君の手を煩わせるのも何だか、優秀の部下はやはり手元に置いておきたくてね」



 男が意味することは、明確。


 裏切者を見つけ出せということ。



「……はい」



 軍では上官の命は絶対。


 まして、総統の命に少佐に過ぎない俺が逆らえるはずもない。


 またこの男の傍で働かなくてはいけないのか。


 気が滅入り、無意識に男から目線を逸らした。


 目に映るのは大理石の床と軍の紋章である双頭の鷲が刺繍された袖口。


 逃げることなんで出来やしない歩いていくしかないのだ。


 一瞬だけ目を閉じ、総統に視線を戻す。




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