とある国のおとぎ話




 さすがに補佐官の手駒とは違い、総統の補佐官である如月のパソコンをハッキングすることは不可能。


 だからこそ薬を使って眠らせ、直接如月のパソコンを閲覧するしかない。


 削除されているデータを復元し、履歴を探る。


 時間は刻々と流れ、それに比例し気分は憂鬱になる。


 思ったより事態は深刻だ。


 部下を使わずに、秘密裏に内外の情報を集めようとしている。


 如月の部下が諜報で集めたデータ外の内容が何重にも掛けられたセキュリティーの先にあった。


 万が一の時の咎を部下に向けさせないがため。


 何とも、如月らしい。


 そして、万が一を想定しているということは。


 あの男に反旗を翻すこともありうると思っているということ。


 眠る如月の額にそっと唇を落としてから、再びパソコンに向き合う。


 彼女に恨まれることになったとしても構わない。


 そんなことは、どうでもいい。


 そんなことは。




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