とある国のおとぎ話
薬と一緒に用意していたソフトをパソコンに入れ込む。
このまま行けば、如月はメインコンピューターへの侵入を必ず試みる。
侵入を試みれば、ダミー情報が流れる仕掛けだ。
そして、彼女の閲覧履歴がそのまま俺のパソコンへと送られるように仕込んだ。
俺が出世をするため、講じてきた手段の一つだ。
これで掴んだ情報を餌にしたり、時に脅し、ここまで上り詰めたのだ。
まさか、そのソフトを如月に使う日が来るとは。
だが、これも一時的なまやかしに過ぎない。
彼女はいずれ気付く。
彼女は愚かではない。
愚かであれば、あの男に利用されることなどなかったのに。
愚かに、あの男をただひたすらに崇拝してくれていたならば、良かったのに。
彼女が気付きそうになれば新たな策を講じる。
そうやって、ずっと歩いてきた。
騙し続けてきた。
そして、とうとうここまで来てしまった。