とある国のおとぎ話
それでも、彼女はやめることをしなかった。
あの男の後ろ盾がなければ、彼女は葬り去られていただろう。
彼女がこの牢獄を抜け出したら、死しかない。
もうどこにも逃げ場はない。
彼女も俺もあまりに恨みを買い過ぎた。
この牢獄の中でしか生きられない。
「ユエ。俺はな。あの時の生活を不思議と不幸だと思ったことはないんだ」
彼女がこうして寝ている時だけは、素直に話せた。
目を開けている時には、言葉が足らなくて、悲しい思いばかりさせているくせに。
そう、あの時、辛いとは思っても不幸だと思ったことは一度もない。
自分の不甲斐なさに、ユエのあかぎれて血が出ている手を包み込んでやることしかできなかった無力な自分が大嫌いだった。
自分の小さな手を強く強く握りしめた。
彼女より大きければ、こんなガキでなければと、悔しさでいっぱいで。
それから十年が経った。
もう、青年と言われる年になって、彼女の身長も追い越した。