とある国のおとぎ話
だが、ユエの理想と、あの男の理想は違っていて。
最初から何もかも違っていて。
俺たちの村が襲われたのも、あの男が仕掛けたことだった。
隣国を手に入れるための布石。
最高の一手を打てただけでなく、国庫の負担になる孤児も一掃できた。
男はチェス盤の上で駒を動かし、それに、と口を開く。
君たちは良い拾いものだった、とあの男は慈悲深い笑みと残酷な目を俺へと向けたのだ。
そして、予定調和とでも言うように思惑通りに事が進み、とうとうここまで来た。
あの男は上手くやるだろう最後まで。
こちらには何も落ち度はなく、隣国の侵略で開戦になる。
そうすれば、周辺国からの制圧もない。
何より、それならば。
ユエが仕方がなく起きた戦争だったと、守るための戦争だったと悲しむだけで済む。
計略だとわからなければ、それで良いのだ。
彼女を悲しませても、必ず彼女は守る。
そのためなら、ユエに対してだって平気で嘘も吐けるし、裏切れる。