とある国のおとぎ話
これから起こる戦争が総統が望んで始める戦争だと知ったら。
多くの死者と俺たちのような孤児を生み出す。
隣国を手に入れれば、この国は豊かになる。
豊かな資源と温暖な気候。
だが、敗国に住まう人々は。
そんなことは、俺には関係ない。
ユエさえ、守れるならば。
だが、彼女はその不幸になる者たちを思い涙を流すのだろう。
それでも、彼女はこの檻の中で生きていられる。
あの男が成そうとしていることを知れば、ユエは間違いなく総統へ銃を向ける。
どれだけ、尊敬し憧れてきた人であっても。
正義のために。
そうなれば、あの男はもがき苦しむ最期をユエに用意し、俺に銃を引かせ、ユエの最期に彩りを添えるのだろう。
そういう男だ。
俺もユエもあの男の元でしか生きられない。
逃げれば、そこで悲惨な最期を迎えるだけ。
「……良い夢見れたか?」
目をぼんやりと開けた如月に声をかけると、うっすら微笑む。
「冬馬くん。いてくれたんだ」
「もう、帰るけどな」
立ち上がる俺に、如月はベッドから起き上がり声をかけてきた。