とある国のおとぎ話
君だけが
「一色少佐。総統が午後一で来るようにですって」
にっこり顔の喜楽のは俺の席の前に立ち、書類を手渡す。
「……わかった」
書類を受け取り、そのまま机の上に放り投げる。
「きっと、大掃除の話ですよ」
自分の席に戻り、喜楽が手に取ったのは未済書類ではなく、せんべい。
「掃除をサボっちゃダメってことですね!大掃除は手間だから、僕嫌いなんです」
一人で延々と喋る、喜楽にすっかりやる気が抜かれ、ソファーにどしりと座る。
「大掃除で済めば良いがな。下手したら内戦だ」
隣国との戦争は石油資源が豊富にあるこっちが有利。
不安要素は反乱軍。
反乱軍一掃を長引かせれば、隣国との戦争を後に控える俺たちには不利。
しかも、切れ者が幾人も反乱軍に渡っている。
今さらに、元上司と友人、そして、恋人を殺しておかなかったことが悔やまれる。
「内戦なんかになりませんよ。花里さんが抜けた時点で、反乱軍が大きくなるから手を打てって言ったのは少佐でしょ?」
「藤崎たちまで抜けたんだ。あいつらにはこっちの情報は筒抜けだった」
「嘘の情報に踊らされているとしたら?」
喜楽の楽しげな声色に、いつも通りの口調で返す。