とある国のおとぎ話

菫色






「もう!!どうして冬馬くんは無茶するのよ!!私、冬馬くんに死なれたらどうすればいいのよ!?」



 彼女は俺がケガをして戻ってくるといつも騒ぎ立てる。


 大したケガでもないのに、いつも傷を見ては悲しげな顔をする。


 笑っていて欲しいのに。



「如月。毎回言っているが、一色少佐って人前では呼べ。あと、いつも勝手に殺すな」



 やっぱり俺の言うセリフも毎回お馴染みなわけだ。



「喜楽君しかいないから、冬馬くんで良いんです!!ね?喜楽君?」



 俺へ向ける怒った表情が喜楽相手にはにっこり笑顔。



「そうですよ。一色少佐にしたって如月大尉に名前で呼ばれたいくせして素直じゃ……ちょ、ちょ、それ凶器になりますから!!」



 レターナイフを喜楽に向かって投げると、一目散に部屋を飛び出して行った。


 きっとこれ幸いとサボるのだろうが、やかましいのが二人もいてはこっちが疲弊してしまう。















「……脱いで。私が診るから」



 軍服で隠れた銃創を彼女は俺を見ただけで気づく。


 悲しませたくないから隠すのにどうしてかいつも気づかれてしまうのだ。




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