とある国のおとぎ話
ぱちんと何かが弾ける微かな音で覚醒する。
「ねぇ?このまま死んでも構わないって、私思っているの」
夢と現実の境を彷徨っていた俺に、サラが身を寄せ囁いた。
どうやら、数年も前の夢を見ていたらしい。
まさか、あの時の女とこんな関係になるとは世の中つくづくわからない。
士官学校を卒業し、少尉になった俺たちは東部で同じ任務に就いていた。
多くの金、人的資源を揃え進軍であるにもかかわらず軍が劣勢に立たされ、多くの同胞がもがき苦しみ死へと旅立った。
だが、自分もそれに連なるかもしれないという恐怖はない。
きっと、サラも。
「良く言うな。誰を盾にしても生き残るくせに」
光を灯すと、白のシーツがオレンジ色に照らされた。
こうして、一緒に過ごすのは久しぶりだ。
生と死が混在する中、俺たちは死者への弔いだとか感傷とは無縁であり、偶然時間が合ったからこうして肌を重ねたに過ぎない。
「冬馬。恋人に対して、もう少し気の利いたことが言えないの?」
片眉を上げるサラを無視して、衣服を手に取る。
「あいにくだな。俺はお前の盾になる気はない」
「あなたみたいな偏屈な盾はこっちから願い下げ。もう、帰るの?」
サラが身を起こし、髪の毛を払いのけると胸が露わになる。
しかし、お互い気にしないのは恋人としての時間が長いからというわけではなく、俺たちの性格なのだろう。