先生、教えて。
タイトル未編集
1,はじめまして、先生。


4月の桜が舞うあの日、私は先生に出会った。
出会ってしまった。
それが、切なくて悲しくて辛くて、でも、愛おしい青春の始まりだなんて思わずに。


入学式の新入生代表挨拶を任されていて強ばった表情のまま歩いていた私を笑顔にしたのは、幼稚園からの幼なじみの2人だった。
「瀬奈、おはよう。」
「珍しく暗いな。新入生トップー。」
爽やかに挨拶をしてくれたのは川口乃愛。そして私を馬鹿にしたのは杉谷真寛。
「おはよう乃愛。真寛、声でかいよっ!もうほんとに最悪。」
「いいじゃんか。この県で一番の海凰学院で新入生トップだろ?最高の高校生活になること間違いないじゃん。」
本当に真寛は小さいときからずっと考えが単純っていうか。。。
3歳で初めて会ったときから、男の真寛はいつも単純に考えて突っ走って、それを乃愛が冷静に止める。私はそんな2人の仲を取り持っていた。
「真寛、あんた、馬鹿なりに少しは瀬奈の気持ち考えなさいよ。」
「はぁ!?誰が馬鹿だよ。2年前、俺が数学教えてやったくせに。」
「ふっ。2年前だけでしょ。たった1回のこと、ずっと引きずらないでよね。そういう所を馬鹿だって言ってるのよ。」
またはじまった。実際、乃愛も冷静に止めながら、結局ヒートアップしちゃうんだよね。
「ま、まあまあ、いいよ。大丈夫!いつも通り頑張ってくるよ。それよりさ、式はじまるから、、、、」
「どうした?瀬奈」
「、、、」
「おい。瀬奈?」
「どうしよう。乃愛、真寛。」
「なによ?」
「私、出会っちゃったかも。」
「は?誰にだよ。」
「運命の人。」
「意味不明だぞ。こいつ、緊張しすぎてついにおかしくなったか。」
「ねえ、瀬奈、もしかして、それって。。。あの人?」
「うん。あのブレザー羽織らずに桜見てて、あっ!こっち来る人!」
「・・・瀬奈、あの人ね、」
なぜか、乃愛は切ない顔をした。
「えっ、嘘。ブレザーじゃない。スーツ、、?」
「あいつ、先生じゃないのかよ。それは無理だろ。」
先生は突然現れて、一瞬で私の心を奪っていった。
「おい瀬奈、あいつこっち向かってくるぞ。なんでだ!」
「ちょっと真寛うるさい。」
そんなことを言い合ってる内に先生は私の前まで来ていた。
「おはよう。はじめまして。きみの担任の水沢ヒロです。きみは、泉瀬奈さんだよね?新入生代表挨拶のリハーサルやりたいから、一緒に来てくれないかな。」
笑顔でそういった先生。
先生、私は気づいてたよ。
あの時先生が、乃愛を見て切ない顔をしてたこと。
乃愛が目を合わせてなかったこと。
どうしてそんなに切ない顔をするの?
聴きたかった。けど、聴けなかった。
私には踏み込んじゃいけない気がしたから。
そして、無理に笑って見せた。精一杯笑って見せた。そうだ。忘れよう。さっきのは、きっと勘違い。うん。今ならまだ大丈夫。
「おはようございます。分かりました。じゃあ、乃愛、真寛、また後でね。」
「おう。」
「うん。後で。」

そして、自分よりも大きくて広い先生の背中を追いかけた。
これから、私にはどんな未来がまってるのだろう。

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