拷問ゲーム
「高木は『走れメロス』っていう物語を知ってるだろ。

友のために、自分の命を投げ捨てようとする偽善の塊の作り話だ。

オレはあの話が大嫌いでよ、あの話を初めて聞かされたとき、ヘドが出たぜ」




藤城はそう言って、オレに近づき、オレの髪を鷲づかみにして、下を向いていたオレの顔を自分に向けさせた。




「オレがメロスなら、竹馬の友とやらを見捨てて、さっさと逃げるね。

だってよ、それが人間ってもんだろ。

誰だって、自分がかわいいからよ」




藤城が言う言葉は、ある意味、真実かもしれない。




だけどオレは、美優を見捨てられない。




美優は体を売って生きていた母親を蔑んでいた。




美優はそんな母親とは、真逆の生き方をしたいと思っていた。




オレはそんな美優の未来を守りたい。




オレのこの気持ちは、決して偽善なんかじゃない。




ただオレは、純粋に美優が好きなんだ。
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