年下男子とリビドーと

「ねぇねぇ、いつもこんな大きいバッグ持って来てるの?」
「……何が入ってるか気になります?」

「……ん、言いたくないなら良いや」

その手には乗らないぞ、と冷静な振りをした。

「冷たいなぁ。僕、美大なんで課題とか、ポートフォリオとか入れているんですよ」
「え、そうなの?じゃ、絵上手いんだ!」

わたしの食い付きに逆に驚いたらしい成海くんが、照れた様子を見せる。

「まぁ、それなりには」

わたしは全く絵心がないので、単純にうらやましかった。
成海くんはどんな作品を作るんだろう。

「絵を描くの?デザイン?」

鹿島さんが話に入ってきた。何か詳しそうな雰囲気だ。

「デザインです」
「私は短大行ったんだけど、頑張って4大行けば良かったって今後悔してるよ」

鹿島さんも絵が描けることなどは初めて知った。
二人が話に花を咲かせ始めたので、何だか入る隙がなかった。
会話の内容もよくわからないし、黙って梅酒ロックを口に運びながら、何となく耳に入れていた。

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