年下男子とリビドーと

わたしは何となく成海くんにもたれかかった。

「冴木さん?」

倒れそうに思えた成海くんは、びくともしなくて、やっぱり男の人なんだと感じさせた。
わたしは、頭がおかしくなったのだろうか。
彼氏以外の人と身体密着させて……。
って、何か思考回路が嫌らしい!
頭の中で煩悩と闘っていると、成海くんがわたしの肩にそっと手を添えた。

ぎくりとしたけれど、心の中を読まれないように、視線は移さなかった。
彼もわたしも何も言わず、そのまま大通りの方角へ歩いた。
心臓が音を立てているのが、聞こえてしまいそうだと思った。

車通りの多い道路に出ると、成海くんがタクシーを拾ってくれて、後部座席に乗り込むように促された。
成海くんはタクシーに乗らず、「よろしくお願いします」と運転手さんに告げた。

「えっ…一緒に乗って行かないの?」

驚きと不安で、彼に質問を投げ掛けると、返事にびっくりしてしまった。

「すいません……俺が限界なんで」

口元を抑えて、恥ずかしそうに視線を逸らす。
その様子に、わたしまで赤くなってしまった。

「おやすみなさい」
「……ありがとう、おやすみなさい」


タクシーが夜の街を走り出す。
わたしも口元を手で覆って、溜息を吐く。

……本気なの?
わたし、彼氏いるって言ったよ?
わたし、28歳だよ?

どうしよう。
嬉しいかもしれない。

今、わたしの顔は真っ赤だと思う。
自分の反応に驚いて、わたしの心は同時に、罪悪感でいっぱいだった。

< 16 / 73 >

この作品をシェア

pagetop