年下男子とリビドーと
わたしは何となく成海くんにもたれかかった。
「冴木さん?」
倒れそうに思えた成海くんは、びくともしなくて、やっぱり男の人なんだと感じさせた。
わたしは、頭がおかしくなったのだろうか。
彼氏以外の人と身体密着させて……。
って、何か思考回路が嫌らしい!
頭の中で煩悩と闘っていると、成海くんがわたしの肩にそっと手を添えた。
ぎくりとしたけれど、心の中を読まれないように、視線は移さなかった。
彼もわたしも何も言わず、そのまま大通りの方角へ歩いた。
心臓が音を立てているのが、聞こえてしまいそうだと思った。
車通りの多い道路に出ると、成海くんがタクシーを拾ってくれて、後部座席に乗り込むように促された。
成海くんはタクシーに乗らず、「よろしくお願いします」と運転手さんに告げた。
「えっ…一緒に乗って行かないの?」
驚きと不安で、彼に質問を投げ掛けると、返事にびっくりしてしまった。
「すいません……俺が限界なんで」
口元を抑えて、恥ずかしそうに視線を逸らす。
その様子に、わたしまで赤くなってしまった。
「おやすみなさい」
「……ありがとう、おやすみなさい」
タクシーが夜の街を走り出す。
わたしも口元を手で覆って、溜息を吐く。
……本気なの?
わたし、彼氏いるって言ったよ?
わたし、28歳だよ?
どうしよう。
嬉しいかもしれない。
今、わたしの顔は真っ赤だと思う。
自分の反応に驚いて、わたしの心は同時に、罪悪感でいっぱいだった。