年下男子とリビドーと
紘希から電話が来たのは久しぶりだった。
「今からうち来ない?」
雨がポツポツと道路を濡らし始めた21時過ぎ、わたしの仕事が終わった頃を見計らってかけて来たんだろうか。
会いたい時は大体わたしの部屋に来てくれていたから、どうしたんだろうと感じた。
紘希が心配で、道を急ぐ。
同時に心の中がざわつく。
わたし、紘希以外の人に、触ってしまった。
触らせてしまった。
このままで良いの?
答えはわかっているが、心の中で自分への問い掛けを繰り返す。
部屋の前に着いた頃には、雨は勢いを増し、音を立て地面に叩きつけている。
鞄から鍵を取り出し、部屋の扉を開けた。
中は真っ暗だ。
「紘希……?」
暗闇の中で、熱い掌に手首を掴まれた。
そのまま抱きとめられる。
「どうしたの……もしかして、熱があるんじゃ……」
「ごめん……莉南にそばに来て欲しくて、呼び付けてしまった」
「呼び付けたなんて、彼女なのに。言ってくれたら飲み物とか果物とか……」
「そういうの買う時間惜しくてさ」
質問を返す間もなく、キスが降ってきた。
何度も何度も、唇が重なる。
「伝染ったら、ごめん……どうしても、こうしたかった……」
どうしたんだろう、紘希。
こんな情熱的なキス、久しぶり……。
紘希の舌がわたしの舌を、唇を、這う。
掌が頬を包み込み、腰に回されていたもう片方の手は、次第にわたしの胸元へと移って行く。
どうしよう、嬉しい。
暗闇に慣れてきて、切なそうに揺れる紘希の瞳が、目の前に浮かび上がってきた。
我慢出来ないみたいに、求められて、見つめられて、胸が熱い。