年下男子とリビドーと

神経を注いでいると、またいつの間にか隣に成海くんが座っていて、少し驚く。
今日は日曜なので4時入りらしい。もうそんな時間だなんて、熱が入るあまり、時間旅行してしまったような感覚だ。

「おはよう」
「大丈夫ですか? 声、変ですよ」

声を掛けてみると、不躾な感想が返ってきた。その手には反応しない……冷静な判断を試みる。

「風邪引いちゃったみたいで」

頭をかきつつ笑顔を返してみると、困惑顔でわたしを見つめた。

「夏風邪は長引きますからね、気を付けて下さいよ」

あれ? 本当は心配してくれてたのかな?
そう思えて、心臓がトクンと音を立て始めた。
なに、嬉しがっているの、わたし……。

こんなことを話していて仕事を疎かにしてはいけないと、キーボードを打ちながら大きく溜息を吐くと、成海くんが反応した。

「マスク苦しいですよね」
「……」

それもあるけど、あなたの言動のせいもあるんだけどな……。
そう思ったことは、口が裂けても言わない。

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