年下男子とリビドーと
横目で睨んでいると、成海くんは何かに気付いたように口に出した。
「もしかして、就活生の僕に伝染さないようにマスクを……!?」
おどけている成海くんを、動揺させてみたい衝動に駆られた。
「……そーだよ、大事な時期でしょ」
努めて平然と口にしたつもりだが、何か顔が熱い。
すると、成海くんの顔がみるみる真っ赤に染まった。
「ちょっ、何赤くなってんのよっ」
そんなあからさまなリアクションを見せられると、こちらが恥ずかしい。
「……冴木さんも真っ赤ですけど」
俯き気味に横目でチラリと視線を送って来た後、唇を尖らせた。
「これは、マスクで顔が熱いの! さぁ、仕事仕事!」
自分のことは棚に上げ、集中する素振りをする。
たぶん、お互いにそう感じていただろう。
赤くなっている相手の顔を見たら、更に顔が赤くなってしまいそうだから、視線を合わせないよう心掛けた。