年下男子とリビドーと

「このトレーにエリア毎に分けて依頼書が入れてあるんだけど、此処で仕分けの作業をして番号を振ってます。この番号は……」

説明を始めると、彼は真剣な眼差しに変わった。
メモを取り出し、ペンを走らせている。
書き留めるのを少し待っている間、彼の姿を頭からつま先まで眺めた。
首から下げたIDカードの裏の名札が目に入る。成海 新(あらた)。かっこいい名前。

いいなぁ。未来に向かって希望に満ち溢れている若者は……。
専門学校を出たものの、上手く就職が決まらず、派遣社員に甘んじてしまったわたしからしたら、素直に羨ましい。

そんなことを思案していると、顔を上げた彼と目が合ってしまった。
瞳がキラキラと輝いている気がした。

「……何か付いてます?」
「ううんっ! そしたら依頼書を取ってきた後の作業を……」

真っ直ぐな視線を向けられて、少し赤くなってしまった気がする。
大人の余裕はどうした。

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