年下男子とリビドーと
成海くんと、以前の様に同じ日に当たっている。
錯覚? とさえ思え、瞼をぱちぱちさせながら何度も凝視してしまった。
成海くんに会える。
顔を合わせるのは1ヶ月半ぶりと思うと、動揺してしまう。
6時前の休憩で、化粧を直し、備えた。
完全に恋する乙女になってしまっている自分に、僅かに顔が緩んだ。乙女という歳でもないけど。
席へ戻ると、成海くんがデスクの脇に立っていた。
会いたかった……。
そこまで視線を送ったつもりはなかったが、目が合ってしまった。
成海くんは、少し目を見開き、気まずそうに視線を逸らした。
だけど、目が合うということは、まだ希望はあるんじゃないかと思えた。
シフトは最後の1時間、ふたりでファイリングに当たっている。いつかのように。
わたしは神様に感謝した。
仕事はきちんとやり遂げなければならないが、この貴重な時間を無駄にはしないと意気込んで向かった。
しかし、久しぶり過ぎて緊張した空気が流れる。
心なしか、お互いに照れている雰囲気もある。
とりあえず、祝福の言葉を贈ろう。
勇気を出して話し掛ける。
「成海くん。内定おめでとう」
成海くんは顔を上げ、持っていたファイルからわたしの顔へと視線をずらした。
わたしは懸命に笑顔を作る。
「ありがとうございます。なんとか」
僅かに微笑んだ。
そんな些細な表情の変化だけで、胸がいっぱいで苦しい。