大好きです
「 俺と一緒にカナダに行かないか?」
泣かない為に必死で下を向いていると、向かいに座る陽ちゃんが言った。
私は聞き間違いかと思って瞬に陽ちゃんの方を見た。
「俺とカナダに行こう。 向こうの学校に行けばそれこそおいそれとは帰って来れない。
那智にぃ 忘れるのにいい場所だろ。」
「俺さ。 卒業したら向こうの大学の研究室に入る事が決まったんだ。」
「 兄ちゃんの事そんな直ぐに踏ん切れる程浅い思いじゃねーだろ?
俺向こう行ったらさ、落ちてる紗季 拾ってやれないからな。
ここから離れる決心したんなら、それくらい遠い街の方がいいかもな。」
陽ちゃんが言っている事が急すぎて頭の中で整理がつかないでいると、
「まぁ、直ぐに返事しろとは言わねーけど、もうすぐ受験シーズンになる。 決めるなら早い方が良いからな。」
私は コクンと首を縦に振るのがやっとだった。
あまりの突然な陽ちゃんからの誘いに 驚きで、私は本屋さんに寄ることを忘れた事にも気づかないまま自宅に戻ってきた。