空の上から愛してる


いなくても困らないでしょう?
あたしは、あなたの玩具じゃない。



震える唇を無理矢理開けて言葉を漏らす。
怖いと逃げていたら何も始まらない。


逃げちゃだめだ。



「先輩のこと…もう好きじゃないんです…」



「本当かよ?」



先輩は一歩、歩み寄り家の敷地に足を踏み入れた。

後退りしようとしても背中にはドアが当たり、逃げ場はない。

何で逃げようとしているの、あたしは。

殴られるのが怖いから?
また先輩が上手い言葉で操って、あたしの気持ちを玩ぶから?


嫌よ、そんなの嫌。



でも、久しぶりに見た先輩をかっこいいと思ってしまう。
崩した制服。
変わらない香水の香り。光る、幾つものピアス。


その時、血管の浮き出た、細い手がこちらに伸びてきた。



そしてあたしをゆっくりと抱いたのだ。



耳に囁かれる、甘い言葉。
低いトーンのボイスが、あたしの体から力を抜く。




やめて、触らないで。



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