空の上から愛してる
お願い…
もう一度あたしの名前を呼んで…
そうしたらあたしは風となり優しくあなたを包むから…。
あたしは人混みを掻き分けて、教室へ向かう。
まだ行き方の知らない教室。
一人で下を向きながら歩いていく。
頭の中から離れない、先ほどの少年。
誰…誰なの?
そればかり気になる。
名前…名前はなに?
欲が芽生え出す。
この時からもう感情が溢れ出していたのかもね。
あなたをもっと知りたいという感情。
綺麗な校舎。
中庭にはベンチがいくつかあった。
きっとここはお昼になるとカップルで埋まるのだろう。
ふと思い出した。
それは先輩のこと。
そうだ、ここには先輩がいる。
急に胸が痛くなる。
「…はぁ…」
ため息を溢しながら、ベンチに座り込む。
先輩と別れてため息が増えたなと実感した。
そんな時、声が聞こえた。
「百合、何してるの?」