空の上から愛してる


泣き疲れたあたしは、行為が終わると世界を変えた。
現実から逃げたかったのだろうか。
何秒も経たないうちに、眠りについたのだ。



そしてその間、大事なものを奪われた。
この日、はめていったのが悪かった。
そこまで気がつかなかったのだ。


それは、ペアリング。



先輩に問いただしても『知らない』と彼は言う。犯人は先輩しかいないのに。
何回も『返して!』と言っても先輩は黙ったまま。
すると最後にこう言ったのだ。



「返して欲しいなら自力で奪え」



この言葉を聞いたあたしは正直何も言うことはできなかった。
呆れてしまったというか、《可哀想》だと思ったのだ。



何故人の気持ちすら読めないのだろう…と。



こんな人を一度でも愛したあたしは情けなく感じた。



この日はリングを返してはくれなかった。
先輩は楽しんでいるのだろう。



あたしはまた優くんに嘘をつかなければならない。



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