空の上から愛してる
すぐに分かる。
あなたの声。
低いトーンのボイス。
身が硬直する。
びくっと体が動き、しばらく固まったまま。
下を向いて、呼吸を落ち着かせる。
視界に映る、汚れた茶色のローファー。
「顔…あげろよ。百合…」
「直…先輩…」
あたしは言われた通り、顔を上げる。
そこにはやはり直先輩がいた。
この時気付いてしまう。
先ほどの少年を見たときは元気よく弾んだ鼓動が、直先輩を見たときにはならなかった。
どうして?
それは、もう恋をしていたから。
蒼い空をバックに、笑う先輩。
あたしは笑顔など作れる余裕などない。
違う意味で、心臓が高鳴っている。
「ここ通ったら百合の姿が見えて。話しかけたんだ」
「…そうなんですか…」
先輩、朝のこと覚えていないの?
あたしたちはもう他人なの。
あたしを感情という海で游がせないで。