空の上から愛してる



桜がひらりと落ちていく。
地上で息を引き取り、土へと還っていく。


春の心地よい風が、静かなあたしたちの間を吹き抜けていった。




「…もう行かなきゃ…。」



この状況に耐えられなくなったあたしは、カバンを持ち、立ち上がる。
立ち上がったとき、先輩との距離はわずかな数センチ。
一瞬、心が揺れた。
けど一瞬で、手に汗が滲んだ。




唇を噛みしめて、先輩から離れる。
次の瞬間、先輩に手を握られた。
指が細く、大きな手。


あたしの手を包んだ手。



「…俺はずっと百合に触れていたいって思う。
…ごめん、これって反則だよな。今朝、約束したもんな…」




悲しそうな口調で話す先輩。
伝わる体温…。




けどあたしはその温もりを突き放した。




「放して…先輩…」



こう言って、先輩の手を放し、その場から逃げるように去って行った。



どくん…うるさい心臓。


鳴らないで。
鳴らないで。





優くん。
あたしは、最初からあなただけだった…。



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