空の上から愛してる
足早に駆けていく。
「はぁ…はぁ…」と息を乱しながら。
『俺はずっと百合に触れていたいと思う…』
それは本心?
違うに決まっている。
先輩は言葉を操るのが上手だから。
まだ、手には汗が滲んでいる。
その手を塞ぐように、ぎゅっと握りしめた。
そしてたどり着いた教室。
ここがあたしの教室。
1年2組。
教室の中には生徒たちがちらほら。
緊張しながら教室に入り、黒板に張り出されていた座席表を見に行く。
小林百合…
真ん中の列の前から四番目の席だった。
隣は、鈴木優。
誰なのだろう?
気になり、自分の席へと視線を移すが、そこには彼の姿はなかった。
まだ来ていないのだろう。
時計を見るとまだ入学式が始まる時間より早いから。
あたしは自分の気持ちを落ち着かせるために、廊下へと出て、窓から空を見上げた。
空の蒼さは、安らぎを与えてくれる。
だからね、優くん。
辛くなったら空を見上げて?
あたしが慰めるから…。