空の上から愛してる
空を見上げているとき、あなたがあたしの後ろを通ったことなど知るはずもなかった。
鈴木優という少年は常にあたしの傍にいてくれた。
「…まだ、熱い…」
まだ熱い手。
まだ先輩の温もりが残っているよ。
手を広げて、空へ向ける。
春風が指と指の間をすり抜けて、温もりを消し去っていく。
これでいいの。
間違っていない、きっと。
「よし!」と意気込み、再び教室に入っていく。
ねぇ、あなたは誰?
真ん中の列の前から四番目に座るあなたは、誰?
鈴木優…?
後ろ姿だけでは分からない。
分かるのは華奢な体だけ。
無造作の茶色い髪の毛。
もしかして…という期待が膨らんだ。
周りを見渡すと、教室にいた女子生徒たちの視線が彼に集中していた。
息を呑み、呼吸を落ち着かせ、一歩ずつ歩いていく。
ゆっくりと顔を彼に向けると、やはり彼は、掲示板にいた…少年だった。
美少年の名前は、鈴木優。
あたしの心は一瞬で奪われた…。