空の上から愛してる



「すいません!」



遠くから聞こえてくる声。
あたしは声が聞こえてくる方向に顔を向ける。



そこにはユニホームを着た少年が立っていた。



蘇る、記憶。
この光景、前にもあったような。



「蹴ってもらえます?」



「え?で…でも…」




あたしは下に視線を向ける。
なぜならばスカートだからだ。
サッカーボールが蹴ったらきっと見えてしまう。


少し躊躇って、ボールを持った。
そして彼のいる場所まで歩いていく。



近づく彼の影。
黒い髪の毛に、黒い瞳。赤い唇に、焼けた肌。
爽やかな少年だった。



「あたし、蹴れなくて。どうぞ!」




「あ、ありがと…。」



はにかむ笑顔が優くんの笑顔に見えた。
可愛くて守ってあげたくなるような…そんなふんわりとした笑顔。




「前にもあったよね?こんなこと」



「…憶えてるの?」




やっぱりと心の中で呟く。




「うん、憶えてる。
部活頑張ってね。じゃあ…」





その時だった…。




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