空の上から愛してる
お互いを何も知らない、ゼロからの交際が始まる。
梅雨明けの間近な季節だった。
安里くんはあたしを大切にしてくれた。
でも、優くんを越えることはどうしてもできなかった。
あたしは安里くんのことを瞳に素直に言う。
本当は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
なぜならば、あれだけ『優くんを忘れられない』と言っていたのに、簡単に違う人と付き合うことにしたからだ。
だからほんの少しだけ言いにくかった。
でも瞳は笑いながら「違う人にいくのもいいかもね。何もしないよりマシかも」と言った。
その言葉を聞いたあたしはホッとする。
安里くんと付き合っていくうちに、好きになればいい。
数学の問題より簡単だとこの時は思っていた。
この時は…。
あたしはまだまだ未熟な人間だった。
そして、街が梅雨が明けようとしていた。