空の上から愛してる
解放された体育館のドア。
体育館に歩み寄り、中を覗く。
広い体育館。
そこにいたのは、あなただった。
無我夢中になってリングを目指してボールを投げ続けている。
まるで何かを必死に求めているようで。
跳ぶ度に、カッターシャツからちらりと見える細い体。
優くんの必死な表情を久しぶりに見た。
凛々しい表情。
大人になりつつあるということだ。
きゅんと胸が揺れる。
どんどん魅力的になっていくね。
醜いあたしを置き去りにして…。
このまま時が止まってしまえばいいのに。
温かいミルクティーから、温もりが伝わる。
暫く優くんに見とれていると、こちらにボールが転がってきた。
あたしの足に軽くあたり、止まった。
気づかれる、存在。
「百合…」
優くんが名前を呼ぶ。
「鈴木くん…何してるの?」
頭が混乱して言葉が出てこない。
唇が震えるよ。
「……ナナを待ってる」