空の上から愛してる


大切なものなの。
あたしの宝物なの。


初めてもらったプレゼントなの。
これがないと、あの日抱きしめられた温もりを忘れてしまうよ。



お願い…お願い…。



夕陽が沈んでいく。
あたしは最終地点の教室へ向かった。




もうそこにはあなたがいた…。



教室のドアに手を掛けて、勢いよく開ける。
誰もいないと思っていた教室には、誰かがいた。


一人の影が伸びている。夕陽のせいで。



これは夢?と一瞬疑ってしまう。



教室には、優くんがいた。
驚いた表情をして一言も話さない。
あたしも驚いていて、言葉が出てこなかった。




「…………」




しばらくお互いを見つめあう。
空には夕陽と月が交代しようとしていた。




「鈴木…くん…」



「百合…何してるの?」



あたしは、宝探しをしている。
でもそんなこと言っても信じてはくれないよね。




「忘れ…モノ」




忘れモノはあなたの手の中に…。




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