空の上から愛してる
「百合、先に行ってるね。ラケット持ってくよ」
ペアの子が空気を読み取ったのか、あたしのラケットを持って、先に部室に行ってしまった。
まだ暖かさの残る春風に包まれるあたしたち。
鼓動が高鳴る。
突然街頭がつき、優くんの顔がはっきりと見える。
やっぱり緊張しているようだね。
顔に書いてあるよ…。
あたしたちはテニスコートの近くにある、ベンチに座る。
まだ距離は遠い。
だって今は他人なのだから。
「……話って何?」
「えっと…」
体の右側だけ熱いよ。
優くんが隣にいるからかな。
香水の匂いがあたしをおかしくさせる。
「百合…ゆっくり…話すから聞いて?」
「うん…」
吉報か、凶報か。
あたしは目を閉じて優くんの声に耳を澄ませる。
「…俺…ナナと別れた」
しばらく、言葉の意味がわからなかった。
なんて言ったの?
そんな、まさか…。