空の上から愛してる
この状態から先に逃げたのは優くんだった。
「小林、男子のほうは終わったから、俺、帰る」
こう言って、プリントを持ち帰ろうとする優くん。
「え?」
「男子のは先に先生に渡してくるから、小林は後から渡しにいけよ」
優くんはこの広い教室に一人にしようとした。
早く帰りたいんだね、
やっぱり相沢さんとメールがしたいから?
もう何も言えない。
関係のないあたしが言える資格はない。
「………うん」
「じゃあな」
古いドアの音が虚しさを誘う。
そして悲しさも誘う。
ぴしゃん…とドアの閉まる音を聞いた途端、瞳から一気に涙が流れていった。
ぽろぽろと落ちていく涙。
目の前には優くんがいない。
もう一度帰ってきて。
あなたに会いたい。
どうして伝わらないの?
あたしの気持ちは、一方通行のまま時間だけが過ぎていく。