空の上から愛してる


戻ってきて…
あたしを一人にしないで。
交差する気持ち。


その時、後ろから声が聞こえてきた。



「百合…」



聞き慣れた声。
腫れ物を扱うような、優しい声。
この声は、沙紀の声。



「小林…どうしたんだよ?」



次に聞こえてきた声は、斉藤くんの声だった。
ゆっくりと振り返るあたし。
涙でぐちゃぐちゃになっているだろう。
けどそんなのはどうでも良かった。



「沙紀…斉藤くん…あたし…あたし…」



震える声。
あたしの声はあなたに届かない。



「…小林、お前さ、俺たちに何か隠してることあるんじゃないの?」



すると斉藤くんが静かにこう言った。
教室に広がるオレンジ色。
それがあたしたちを包んでいく。



「…どうして…こんなにも苦しいのかな…?」



苦しいよ、痛いよ。



「俺と沙紀は逃げないから、小林を苦しめていることを全て言えよ」



頼れる存在。
全て言うことにするよ。


あなたとの今までを。



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