空の上から愛してる
一歩ずつ教室に向かっていく足。
楽しそうに廊下でお喋りをする女の子たち。
『昨日のあの番組観た?』と会話を楽しむ男の子たち。
どんよりとした気持ちなのはきっとあたしだけだろう?
下を向いて、教室を目指す。
普通、普通に。
「てか、水島さんって呼ぶのやめてくれない?もう友達じゃん?だから沙紀でいいよ」
教室の外まで沙紀の声が聞こえてくる。
「優、惚れたらぶっ殺す」
斉藤くんの怒った声。
「分かった」
優くんの照れた笑い声。
「少し仲が深まった気がする!」
あたしも優くんに名前で呼んで欲しい。
些細な、欲です。
「ずるーい!」
このくらいの願い、叶えてよ。
心までくれなくてもいいから…。
勇気を振り絞る。
怖くて、痛くて、
優くんを真っ直ぐ見られなくて。
でも、百合って呼んで欲しかった。