空の上から愛してる
だから追いかけていきたかった。
だが、後ろから誰かに腕を掴まれて、先へ行けなくなった。
あたしの腕を掴んだのは斉藤くん。
彼の大きな手が腕をぎゅっと握りしめる。
「斉藤…くん?」
斉藤くんは下を向いて、小さな声を漏らした。
何かの警告のように。
「今は、行かない方がいいかも…」
その言葉は優しさで溢れていたのを、今でも覚えている。
あの時、斉藤くんの言葉を素直に聞いていれば、苦しくて辛い思いはしなかったのかな。
「心配してくれるの?…大丈夫だよ。ありがとう」
だがあたしは無理矢理にでも行こうとした。
この目で確かめたくて。
斉藤くんの腕を離して、教室を出ていく。
教室を出て、右を見ると優くんの姿が見えた。
案外早く見つかった。
1年3組。
この時のあたしは忘れていた。
あの人の存在を。