空の上から愛してる


今日はいいことがない。あ、でも優くんに名前を呼ばれたことが唯一の良いことかな。



疲れた体を引きずり、家に向かう。
家に着いた途端、大きなため息が出た。
それはリビングまで聞こえていたらしく、お母さんがリビングから顔を覗かした。


「どうかしたの、百合?」


ローファーを脱ぎながら「何にもだよ」と言って笑ってみせる。


これで不安は消えてくれるだろう。



「そういえば、最近家に来ないね。直くん」



名前を聞いた瞬間、どくんと心臓が揺れる。
もう聞きたくない名前だったのに。

忘れていた。
先輩はお母さんと仲が良かったことを。
よく夕飯を一緒に食べていたし、最近先輩と別れたと言っていなかった。


「もう先輩の話しないで…ごめんね。思い出したくないの」



そう言えばお母さんは分かってくれるでしょう?

出逢ってたら別れは必ず来る。


それは、突然に…。




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